リスクはリターンをむしばむ
今回は、リスク(値動きの大きさ)とリターンの関係についてのお話です。
例えば、年間のリターンが1/2の確率で+20%、1/2の確率で-20%になる株式があるとします。この株式の期待リターンは、0%です(20%×0.5+▲20%×0.5=0%)。
現在100円の株価が1年後に+20%、2年後に-20%になった場合、株価はどうなるでしょうか?
直感的には、±0%で100円だと考えてしまいそうですが、そのようにはなりません。
実際計算してみましょう。
1年後:100円×(1+0.2)=120円
2年後:120円×(1-0.2)=96円
(96円-100円)÷100円÷2年=-2%
というわけで、期待リターンは0%なのに、実際のリターンは年率2%のマイナスとなってしまいます。
ちなみに、1年後に-20%、2年後に+20%のケースでも答えは同じです。
投資の期待リターンを計算するとき、過去のリターンを単純平均して算出しているケースがよく見られますが、このように値動きがあると実際のリターンは低くなります。
これが、「リスクはリターンをむしばむ」と言われるゆえんです。
では具体的に、リスクがリターンをむしばむ程度はどうやって計算するのでしょうか。
価格変動の大きさを標準偏差とすると近似値は、「標準偏差^2÷2」で計算することができます。
先の例では、標準偏差20%なので、0.2^2÷2=2%となり、リターンを2%低下させると計算することができます。
ちなみに、標準偏差10%ならリターンは0.5%低下、標準偏差30%なら4.5%低下となります。
このように価格変動が大きくなればなるほど、表面的にはリターンが高く見えても、実際のリターンは低くなってしまいます。要するに、価格変動の大きい株の場合は、その分、期待リターンが高くないと割に合わないということです。
株価の季節性について
猛暑が一服して、過ごしやすくなってきましたが、株価は夏枯れで軟調な相場が続いていますね(^_^;)
今回は、株価の季節性について確認してみたいと思います。
下の表は、1980年以降の日経平均の騰落を月別にまとめたものです。
◆月別騰落データ(1980年~)
ここでは、日経平均の月間騰落率がプラスの回数を上昇回数とし、上昇回数の割合を勝率としています。
この表から読み取れるのは、7~9月は下落し、11~12月は上昇する傾向があるということです。
7~9月に下落する理由は、「機関投資家が夏季休暇を控えて持ち高を縮小する。」、「海外ヘッジファンドが決算期末を控えて利益確定売りをする。」などが挙げられます。
反対に11~12月に上昇する理由は、「11月は中間決算の発表をきっかけに7~9月に下落した銘柄が買い戻される。」、「12月末に向けて機関投資家によるドレッシング買いが入りやすい。」などがあります。
あくまで過去の相場の傾向なので、今後どうなるかは、その時々の状況によります。
ただし、個人的には、季節性を参考にしてトレードしている人は割といるので、今後もこの傾向は続くのかなと思っています。
業績好調にも関わらず、軟調な相場を受けて下落している銘柄を夏場にしっかり拾っておけば、年末には報われているかもしれませんね(*´∀`*)
PERの目安は、なぜ15倍なのか?
PERの水準を考えるとき、15倍が目安といわれていますが、
なんでだろうと疑問に思ったので考察してみました。
1.過去のPERの平均値
まず最初に、過去のPERの平均値を調べてみます。
使うデータは、米国株の1900年以降の株価データです。
この約100年ちょっとの期間のPERを調べると・・・
平均15.6、標準偏差7.5となります。
つまり過去においては、PER15倍を中心に8倍~23倍くらいの幅で推移していたことがわかります。
ではなぜ、PER15倍を中心に取引が行われてきたのでしょうか?
2.PERの理論値の計算
ここでPERの理論値は、どうやって計算するのか確認したいと思います。
株価の計算に使われる割引配当モデルにおいては、以下の式で表されます。
PER=1÷(RF+RM-G)
RF:リスクフリーレート
RM:リスクプレミアム
G:配当成長率
つまり、この3つの項目(リスクフリーレート、リスクプレミアム、配当成長率)がわかれば、PERの理論値が計算できます。
3.リスクフリーレート
まず、リスクフリーレートですが、これは無リスク資産の利回りのことです。
短期金利を使うのか、長期金利を使うのかは、議論が分かれるところではありますが、一般的には長期金利を使うことが多いので、今回は米国の10年物国債利回りの1900年以降の平均値4.7%を使うことにします。
4.リスクプレミアム
次に、リスクプレミアムですが、これは、リスクに対して投資家が要求する利回りのことです。
株式のリスクは、価格変動リスク、流動性リスク、信用リスクなどがありますが、今回は市場平均のお話なので、主なリスクは価格変動リスクとして考えてみます。
価格変動リスクは、ボラティリティ(値動きの振れ幅)のことで、一般的には標準偏差で表し、米国株の場合は年率18%程度です。
つまり、米国株の値動きの振れ幅の目安は1年間で±18%程度ということになります。
では、この年率18%のボラティリティに対するリスクプレミアムは、どの程度でしょうか?
これを計算するのに使うのが、ブラックショールズモデルです。
ブラックショールズモデルは、ボラティリティや金利、原資産価格などからオプションの価値を計算するのに使われるモデルです。ここでは、ボラティリティ以外の要素を排除するため、金利ゼロ、配当ゼロ、ATMストライクとして計算すると(この場合であればボラティリティ×0.4で、リスクプレミアムの近似値を求めることができます)、年率18%の場合で、リスクプレミアムは7.2%となります。
5.配当成長率
最後に配当成長率ですが、これは1株当たり配当金の成長率で、1900年以降の平均値は5.4%です。
6.過去のPERの理論値
以上3つの項目の過去平均(リスクフリーレート4.7%、リスクプレミアム7.2%、配当成長率5.4%)を、先ほどのPERの式に入れて計算してみると
1÷(4.7%+7.2%-5.4%)= 15.4(倍)
となり、PERの目安である15倍となりました。
つまり、「PERの目安は、なぜ15倍なのか?」の答えは、過去のリスクフリーレートとリスクプレミアムと配当成長率の関係から、15倍が妥当な水準だったからということになります。
7.今後のPERの理論値
最後に、今後のPERの水準について、考えてみたいと思います。
今後の予想PERを計算するには、3つの項目の予想値を使えば計算することができます。
例えば、リスクフリーレートを直近の米国10年物国債利回り約3%、リスクプレミアムは6.4%(過去30年間の平均ボラティリティ16%×0.4)、配当成長率は4%(米国の潜在成長率2%+期待インフレ率2%)とした場合、
1÷(3%+6.4%-4%)=18.5(倍)
となります。
8.まとめ
①過去においては、リスクフリーレートとリスクプレミアムと配当成長率の関係から、15倍が妥当な水準だった。
②低金利・低ボラティリティ環境が続くのであれば、PERは15倍より高くなる。
③金利やボラティリティが上昇する場合は、PERは低下する。
「株式ブログ」はじめました
はじめまして
30代兼業投資家のprintfと申します。
株式投資について、考えたことや思ったことを残しておこうと、ブログを始めました。文章を書くのは得意ではないので、わかりにくいかと思いますが、生暖かく見守っていただければ幸いです。
よろしくお願いします。